オフィス・ラブ #∞【SS集】
(そんなの、意識したことある?)
企画部ではコストダウンなんて言いつつも、せいぜいが安い紙を使ったり、ライティングを減らしたり、その程度だ。
別に生産部門でないのだから、仕方ないのだけれど。
自分たちが働くという、そのこと自体にコストがかかっているなんて、誰も意識していない。
そのことが、別業界から来た堤には、あぜんとするほどの驚きだった。
その結果が、松岡みたいな働きぶりに表れていると彼には思え。
堤は松岡自身に加え、それを許す体質の甘さが、受け入れがたかった。
「俺は、お前を、許さない」
軽い挑発に、すぐ乗って。
新庄は、爆発した。
面白い、と思った。
日頃あまり負の感情を表に出さない彼が、怒りに震える姿を見るのは愉しく。
こういう直情的な面を持たない自分には、新鮮でもあり。
どう出るのかな、と新庄の復讐を心待ちにしている自分さえいた。
コンペに全員参加と聞いた時、やった、新庄と争える、と喜んだ。
営業のように、取り扱い額が明確に出るわけではないこの部署では、何を基準に戦えばいいのかわからない。
けどコンペなら、白黒がはっきりつく。
堤は、特に勝ちたいとも負けたいとも思ったことがなかったけれど、勝負するのは好きだった。
人が一番本気で、素になるのは、そういう時だと思っていたからだ。
お人よしで人情家の新庄は、中途入社である自分を気づかって同じチームへと誘ってくれたけれど、冗談じゃないよ、と蹴散らした。
どうしてこいつはこう、いい子ちゃんなんだろう。
特にモラルなんかを気にするようには見えないのに、根っこのところで、どうしようもない優等生だ。
お前と戦いたいんだよ。
そのくらい、わかろうよ。