オフィス・ラブ #∞【SS集】

(そんなの、意識したことある?)



企画部ではコストダウンなんて言いつつも、せいぜいが安い紙を使ったり、ライティングを減らしたり、その程度だ。

別に生産部門でないのだから、仕方ないのだけれど。

自分たちが働くという、そのこと自体にコストがかかっているなんて、誰も意識していない。

そのことが、別業界から来た堤には、あぜんとするほどの驚きだった。


その結果が、松岡みたいな働きぶりに表れていると彼には思え。

堤は松岡自身に加え、それを許す体質の甘さが、受け入れがたかった。





「俺は、お前を、許さない」



軽い挑発に、すぐ乗って。

新庄は、爆発した。


面白い、と思った。

日頃あまり負の感情を表に出さない彼が、怒りに震える姿を見るのは愉しく。

こういう直情的な面を持たない自分には、新鮮でもあり。

どう出るのかな、と新庄の復讐を心待ちにしている自分さえいた。





コンペに全員参加と聞いた時、やった、新庄と争える、と喜んだ。


営業のように、取り扱い額が明確に出るわけではないこの部署では、何を基準に戦えばいいのかわからない。

けどコンペなら、白黒がはっきりつく。

堤は、特に勝ちたいとも負けたいとも思ったことがなかったけれど、勝負するのは好きだった。

人が一番本気で、素になるのは、そういう時だと思っていたからだ。


お人よしで人情家の新庄は、中途入社である自分を気づかって同じチームへと誘ってくれたけれど、冗談じゃないよ、と蹴散らした。


どうしてこいつはこう、いい子ちゃんなんだろう。

特にモラルなんかを気にするようには見えないのに、根っこのところで、どうしようもない優等生だ。


お前と戦いたいんだよ。

そのくらい、わかろうよ。

< 139 / 206 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop