オフィス・ラブ #∞【SS集】
堤のモットーは、何事も楽しく、だ。


特にコンペなら、細かい実現性などを気にせずに、思いきり面白いことをできる。

というか、そういうことをやらなきゃ、損じゃないか?


絶対に実現できないような、ファンタジックでエキセントリックな企画にしてやろう、と思った。

ふざけすぎて評価が低くなるのなら、頭の固い審査員を笑ってやるだけだ。


その考えを共有できる若手を集めて、邪魔な先輩社員に煩わされることもなく、純粋に楽しく、企画準備を進めた。





おかしい、と思った。

新庄たちの企画に、切れがない。


彼らのプレゼンは、ちょうど堤たちの直後だった。

確かに秀逸な企画で、新庄らしく真面目で、けど十分な遊びもあり、ユニークだ。


だけど、どこか。

純粋に、優れた企画を世に出したいという心意気のようなものが、壇上の新庄からは感じられなかった。

なんだろう、おざなりというのではないけれど。

向いている方向が、少し、ずれているような気がする。



『時と共に広告は姿を変え、けれど消滅することなく、ユーザーのそばにあり続けます』



そのフレーズを聞いた時、そうか、と確信した。

新庄は、自分たちの企画をつぶすためだけに、あの企画を用意してきたのだ。


けれど、どうやって。

あそこまでピンポイントでぶつけてくるには、そうとう早くから、こちらの企画内容を知っている必要があったはずだ。





「ごめんね」



いたずらっぽく笑って、チームメイトだったグラフィッカーの女子がそう伝えてきた時は、笑いだしたくなった。

実際、笑いだした。

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