オフィス・ラブ #∞【SS集】
やるじゃないか、新庄。

お前にこんな、汚い手が使えたとはね。


たぶん、ああいう性格の新庄にとっては、相当なストレスと葛藤だっただろう。

それでも、あんな迷惑社員ひとりのために、そこまで怒りを燃え立たせて。


やってのけたのか、新庄。


すごいよ。

褒めてやるよ。

お前意外と、素質、あるよ。



結果発表の後、新庄を探したけれど、チームの中にその姿はなかった。

ははあ、と思いフロアに戻ってみると、やはりそこに、ぽつんとひとり、たたずむ姿があった。


あまりに可愛くて、笑ってしまう。

自分のやったことの汚さに、醜悪さに、今ごろ気がついて震えてるんだろう?


あのね、人を疎んだり憎んだりするってのは、そういうことなんだよ。

自分の醜い面と真っ向から向きあって、それでもなお、相手を切り捨てるか許容するか、決めなきゃいけないんだよ。

不慣れなお前には、その覚悟がなさすぎたんだ。

バカだね。



やるじゃん、と心からの称賛を浴びせると、顔を上げた新庄の、揺れる瞳と目が合った。

その揺らぎに、吹き出しそうになるくらい加虐心をかきたてられたけれど。


まずは純粋に、やられたことへの仕返しをしてやらないと、と思った。

いかにも喝を入れてくださいとでも言いたげな顔を、お望みどおり引っぱたいてやると、悔しそうに悲しそうに、新庄が唇を噛んだ。


なんだろうね、こいつは。

やっぱり素質なんて、ないかな。


けど一応、楽しく真剣に臨んだコンペを卑怯な手でぶち壊された怒りは、ある。

ここは、こいつの罪悪感をより強くしてやろうかな、と意地の悪いことを考えた。

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