オフィス・ラブ #∞【SS集】
堤さんは、やあと俺に挨拶すると、スツールにかけている新庄さんの肩に、親しげにひじを置いた。



「どう、この男」



難物でしょ、と言うのに、複雑な気分でうなずく。

新庄さんは、肩に置かれた腕を嫌そうに払いのけて、堤さんを振り返った。



「どうやって、アドテクに入れたんだ」

「俺の根回しは、マーケまでだよ。後は、彼の運が引き寄せたんだろ」



俺の研修先の話だ。

マーケに研修に行かせてやる、と言われた時は、このつかみどころのないチーフの冗談だとばかり思ってたんだけど、本当にそれが決定した時は、何者なんだあの人、と恐ろしくなった。



「お前的に、どう、彼」



堤さんが、俺を見ながら面白そうに持ちかける。

やめてよ、本人の前で。



「新人で、ここまでできれば十分だろ」

「違うよ、男として」



えっ。

それなら聞きたいような、聞きたくないような。


新庄さんは堤さんをぽかんと見あげて、続いて俺を見る。

煙草を一本くわえて火をつけると、おもむろにスツールから立ちあがった。



「まあ、人の好みはそれぞれだと思うが」



それ続けてろ、と身振りで俺に示し、一筋煙を吐くと、堤さんと奥の一角へ向かいながら、俺を見て傲慢に笑む。



「俺の敵じゃない」



堤さんが、満足そうに笑い声をあげた。

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