オフィス・ラブ #∞【SS集】
長い祈りを終えた女性は、立ちあがって、すぐ近くに呆然と立ちすくんでいた私たちに、当然ながら驚いた様子を見せた。

会釈をして去ろうとする女性に、あの、とたまらず声をかける。



「…どなたか、亡くなったんですか」

「ええ、娘が」



私の声に、ただならぬ空気を感じたのか、怪訝そうにしながらも、すぐ応じてくれた。



「…おかっぱの、このくらいの?」



新庄さんが、あの子の頭の高さくらいに手をやって、尋ねる。

30代なかばくらいのその女性は、不思議そうにうなずきつつ、新庄さんの車に目をとめて、はっと目を見開いた。



「お会いになりました?」

「たぶん」



新庄さんが慎重に答えると、女性が、納得したようにため息を漏らす。



「あの子はここで、主人の車を待つのが、好きだったんです」





あの子は、遠方に赴任しているお父さんの帰ってくる日になると、その車をここで待っているのが楽しみだったらしい。

少し小高いカーブの上にあるこの駐車場は、坂を上ってくる車を、だいぶ早くから見つけることができる。



「去年の夏だったんですけど、主人が電車で帰ると言っているのに、どうしてか、あの子は聞かなくて」



ここを通るはずもないお父さんの車を、ずっと待っていたんだと言う。

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