オフィス・ラブ #∞【SS集】
それを言ったら、私、たぶんあなたの2、3倍は不満があるけど。

けど、気にしたって仕方ないから、考えないようにしてるのに。

そのへん、もっとコントロールしてよ、年長なら。


なんでこの人、たまにこういう、どうしようもなく愛しい一面を見せるんだろう。


私のあきれが伝わったのか、新庄さんはバツの悪そうな顔で煙草に火をつけかけて、ライターがないことを思い出したらしい。

そんなことだろうと、帰り際に持ってきたマッチを、はいと差し出すと。

新庄さんは、煙草をくわえたまま、一瞬目を見開いて、素直に受けとろうとする。

その手から、マッチをさっと引きあげた。



「お礼は?」

「…サンキュ」



それだけですか? と顔を見ると、ちょっと不本意そうに目を泳がせて。

煙草を口から離して、私の首に片手をかけると、一応謝罪のつもりなのか、妙に行儀のいいキスをくれた。

深いシートで、やや不自由な体勢ながらも、優しく、紳士的に口づけてくれる。


とりあえずは満足したので、すんなりマッチを渡してあげると、素早く火をつけた新庄さんが、ギヤを入れて車を出す。



「どこに連れてってくれるんですか」

「さあなあ」



俺なんかとは、どこにも行きたくないらしいからなあ、と嫌味に言う横顔をにらむ。

いつまで根に持つつもりだ。



「新庄さんて、なんだかんだ、焼きもちやきですよね」

「そんなことはない」



なんて往生際の悪さだろう!

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