イケメン御曹司に独占されてます
ジリジリと後ずさるとヒールの踵が壁に突き当たり、逃げ場を失う。
ちょっとした梁の影。皆からは死角になって、それが何だか秘密めいた空間を作っている。
結果的にその隙間に入り込んだ私たちは、傍目からは一体どんな風に見えているんだろう。
こんなに人がいっぱいる場所で……。いや、それ以前に、会社の先輩と後輩という立場としては体が近づきすぎているのでは?
動揺する私を無視して、池永さんは掴んだ手首をごと私の体を壁に押し付けた。もう片方の手を壁について、上の空間も塞いでしまう。
見苦しいほど狼狽える私を、酔って潤んだ瞳が見下ろしている。
壁ドン?
こ、こないだから、こんなの、多いな……。
い、いや、でも今日の相手は池永さんで……。
歓送迎会で、拓哉さんに壁ドンされた時とは比べ物にならないほどの緊張感が私を襲う。
「このあいだ、拓哉にもこんな風にされてただろ。あの時……あいつにキスでもされた?」
「し、してません、そんなこと……」
「だけどお前、特に拒んでるって感じじゃ無かったけど。もしかしてその何にも知りませんって雰囲気は演出で、もしかして百戦錬磨とか?」
「そ、そんなことありませんっ。キ、キスなんてしたことないから、わかりませんっ」