イケメン御曹司に独占されてます
「お客様、大丈夫ですか?」


転んだ私に気づいたホテルの人が、心配そうに顔を覗き込む。その優しげな口調に、おもわず涙が滲んだ。
けれど、こんな場所で泣いてはいけない。
私が今日ここへ来たのは、あくまで専務の連れとして。
ここで取り乱したら、専務の顔に傷がつく。


「大丈夫、です」


精一杯の作り笑いをして立ち上がろうとした時、不意にあらわになった肩にふわりと上着がかけられた。
冷たいサテンの、つるりとした肌触り。よく知っている香りを感じたら、そのまま後ろからぎゅっと包み込まれる。


「なんでこんなことになってる? ……本当に、一瞬たりとも目が離せないんだな」


そのまま引き上げられ、肩を抱かれた。足が震えて立っているのがやっとだったけれど、池永さんに強く支えられて、胸の中に抱かれている格好になった。


「きみたちは……何?」


「秀明さんっ」


それまで黙っていた真ん中の美少女が、私と池永さんの前に立ちはだかる。
品の良い服装と手入れされた髪。
何よりも池永さんを見る、ひたむきな瞳が痛々しい。


「縁談のこと、正式にお断りになったって、本当ですか」


「きみ……まさかそれでこんなことを?」


冷たく澄んだ声。拒絶以外感じられない、残酷な声だ。


「だって、秀明さん、琴乃(ことの)とお付き合いしてくださっていたでしょう?」


「付き合い? 一体いつ?」


「だってあの時……」
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