イケメン御曹司に独占されてます
——だけど、今日の佐藤さんは楽しそうだったな。お前とも仲良くなってもらえて良かったよ——


月夜の公園で、池永さんが言っていた言葉を思い出す。


——佐藤さん、初めて割り込めた大きな仕事で張り切ってるし……。それにもうすぐ二人目のお子さんも生れるから本当に今頑張ってる。だから、お前もできる限り力に——


あの日、月を見上げた池永さんの横顔を思い出す。月を怖がって目を閉じた私と、挑むように見上げた池永さん。

それから、いつも自信満々な池永さんが私に見せた、昨日の切羽詰った表情。焦りに掠れた声。懇願するような眼差し。


もしかしたら池永さんも、私のように迷うのかも知れない。
それでもいつだって、挑むことを止めないのだ。あの夜、挑むように月を見上げたように。
強くて、揺るぎない。いつだって冷静で、冷たいようでいて、熱い。
それが秀明。池永秀明。秀明と言われる所以(ゆえん)——。


不意に鳴り響いた電話にワンコールで取ると、さっきより落ち着いた声の佐藤さんが、穏やかに言った。
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