イケメン御曹司に独占されてます
複雑に絡まった糸が、少しずつ解けていく。


私は手の中にある透明なキューブを見つめながら、さっき拓哉さんが話してくれた様々なことを思い返していた。


『暖炉の上に飾ってる写真を見た?
秀明のお母さんの髪の色は日本人離れした栗色で、秀明の元々の髪の色もその色だ。だけどあいつ、社会人になって急に黒く染めやがった。僕と同じフロアに配属が決まったからだな、きっと。
僕? 実はもっと黒くて、これは染めてる』



源兄ちゃんの家に向かう電車の中。私は糸が切れてしまわないよう、用心深く絡まった糸を解く。


『萌愛ちゃんが怪我をした時、ご両親にお詫びに行ったのは僕の父なんだ。その時に、治療費という意味でお金を渡そうとして、萌愛ちゃんのお父さんに不愉快な思いをさせてしまった。
ごめん、僕からも謝るよ。他に方法を知らない人だったんだ。
あれから何度かお父さんにはお会いして、今じゃ気さくに話をする仲らしいよ』


この間、突然掛かって来たお父さんからの電話の内容も、それならば何だか頷ける。私に怪我をさせた縁で、時々連絡を取り合う関係だったものが、今回の私の入社で、さらに深いつながりになったのだろう。

たまに近況を連絡するのは、池永さんの役割だったという。……なんか、複雑だ。
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