イケメン御曹司に独占されてます
私からは手編みのマフラーをプレゼントした。
細いカシミアで編んだ濃紺のマフラーは軽くて暖かいし、普段仕事で着るコートの中にもしてもらえる。

今のところ会社では私たちのことは秘密だから、せめてマフラーだけでも一緒に居られたら、と編んでしまったのだけど、いきなり手作りなんて大丈夫だったかな!?
そんな心配をしていると、池永さんが優しい瞳で言った。

「手作りのものって、その人のためだけに作られるから特別なんだ。母さんも、よく俺に洋服とか、カバンとか、セーターとかを作ってくれて。母さんは父さんにもよくセーターとか編んでたな。父さんは大人気(おとなげ)なくよく俺に自慢してきて」


そう言って微笑んだ表情は穏やかで、私は何故だか泣きたくなる。


「次はセーター編んで。手袋も欲しいな……。それから……」


そう言いかけた池永さんの首に思わず抱きついた。戸惑った気配の次には、優しくて甘い声。


「馬鹿だな、萌愛は。……俺は寂しくないよ。おばあ様や叔父さん、拓哉たちだっているし、源之助の家族や萌愛のご両親や……。空手の仲間だって会社だって。みんな俺を助けてくれる、かけがえのない存在だ。今までだって十分幸せだったけど……」


そっと体を離した池永さんが、涙できっと赤くなった鼻先に、チュッと優しいキスを落とす。

「今は萌愛がいる。こんなに幸せで何だか怖いくらいだよ。だから今日はこれ以上は望まない。明日はまた忙しくなるし、今日はここで……」


そう言いかけた池永さんに、また強引に抱きついた。
もう、胸がいっぱいだけど……。
だけど、ちゃんと、ちゃんと伝えなきゃ。
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