イケメン御曹司に独占されてます

「福田、勝手にいなくなるな。専務が心配されている。……拓哉、お前のことは加奈子が探してる」


「なに？　面倒な話なら、ゴメンだ」


「拓哉、お前いい加減にしないと……」


苛立ったように視線を向ける池永さんに、拓哉さんが冷たい視線を返した。
さっきの優しげな表情からは想像もつかない。
やっぱりこのふたりの間には、何か特別な事情があるのかも知れないと察する。


「萌愛ちゃんの前だ、止めろ。それにお前だって……。いいのか？　困るんじゃないの？　色々と」


「……はっきり言っておくが、この前みたいなふざけた真似は金輪際止めろ」


私を背中に隠すようにしたまま、池永さんが鋭い視線を投げかけて、またふたりの間に緊迫した空気が流れた。
けれど、次の瞬間にはすぐに目を逸らした拓哉さんが、肩を竦めながら立ち上がる。
そして私に笑みを投げかけると、またね、と言ってそのままパーティ会場に向かった。


拓哉さんの背中が扉の中に消えてしまうのを見届けると、池田さんがようやく緊張を解いて私の手を引く。