私の小さな願い事
~土方歳三~


依里を寝せることで、俺たちは二人きり


「戦を免れそうに無い」

桂の言葉が、重かった

元の仲間と争ったばかりの俺たちは
また、新たな戦になるのか…


「大政奉還が行われたのに、現状が変わらないことに薩摩がいらだっている
天子様が王政復古を決断できないでいる
出来ることなら、戦を避けたいが
俺にも止められない」


「そうか… 依里は、なんて?」

「何も話していない」


少し沈黙の後


「旅籠で楽しく働いていたのに
俺が、何の気なしにこれからのことを話したせいで
巻き込んでしまった
俺が、こんなことを頼むのは、筋違いだが
それとなく、振ってくれ
戦に参加するなど言い兼ねん
そちらにも、こちらにも
あいつが参戦することは、痛いだろう
旅籠に戻したいんだ」

「そうだな… どちらかの敵になることは
避けてやりたいな
桂… 俺、依里に惚れてる
そばにおきたいと思っているが
俺のそばにいれば、無理してでも…
戦に出ると言う」

「もう、人は殺さない
そう言っていた…ならば、身を守ることが
おろそかになる」

「わかった…  手放そう」

「すまない… 
そのかわりという訳ではないが、明日の
夕刻まで、ここで過ごさせてくれ
長州の皆を好きだと言ってくれた
その言葉に、多くの者が救われた
戦から遠ざけ、必ず守る
約束する
では、明日迎えにくる」


桂は、依里の事を大事に思ってくれている


それは、俺と同じ恋心だが


それを表向きに出さない


それを出すと、依里が迷うことを

知っているのだろう



部屋へ戻るとぐっすり眠る依里の姿



近藤さんの部屋に、皆を集め

桂との会話の内容を伝えた


「明日の夕刻までは、一緒にいられるんだよな!?じゃあさ、今夜は宴会だ!!
総司にも伝える!!!」


まだ、宴会するって言ってねぇよ!!

「行ってしまったか…決まりだな」

永倉の暴走勝ちだな…


まだ、手放したくない、気持ちの整理が
つかない


それでも、依里の為だ











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