私の小さな願い事
~依里~


東宮様にも挨拶を済ませた


二条城まで、歩いて行きたいとお願いしたので、警護がつけられる

外に出ると、やっぱり新選組


あれ?


「なんで?」


うっかり間抜けな顔をしてしまった


だって、一ツ橋様がいるんだもの


「迎えに来た」


どんだけ、私を信用してないの?

「ふふっ」


私が笑うと


「早く、会いたくて… すまん」


嬉しい

心から、そう思った

  
「嫌でも、毎日会えますよ!」


意地悪に言ってみると

「嫌なものか!!」


真剣に返してくる

この人、からかいがいがある


「私も、嫌じゃないです」  



「依里」



一ツ橋様の差し出す手に、そっと右手を乗せた

これから、この人と一生、一緒に歩くのね


不安はない


今のとこ






新選組が配置につく前に

深く頭を下げた

一ツ橋様は、キョトンと何事か見守っていた

「新選組の皆様、お世話になったのに
お礼も言わぬまま、勝手に姿を消したこと
申し訳ありませんでした
今後とも、よろしくお願いします」

「依里様、お幸せに!!!」

勇が、代表して言ってくれた

チラッと歳三を見たら、憎たらしいくらい

笑っていた


「ありがとうございます
幸せになります」

「幸せにする!!!」


一ツ橋様が、感極まったのか、男泣き

勇まで……


なんなの……?


自分でも、顔が引きつるのがわかるほど

引いた


似た者同士ね



歳三と目が合い、苦笑いした



歳三、優をよろしくお願いします




再び、深く頭を下げてから


一ツ橋様と御所を後にした


通常、このように無防備に歩くことは

考えられないが


町の人々から、祝福の声をかけられ


嬉しいやら、恥ずかしいやら


俯いて歩いた




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