イジワル社長と偽恋契約
そんな私を見た社長はどこか嬉しそうで、口元緩ませると手に持っていた資料をデスクに置いてニヤニヤしながら私を見つめた。





「お前がそこまで俺との賭けに真剣になっているなら俺も乗ってやろう。さっき最大のヒントを出してやった…“俺は紅茶は飲まない”って」

「…」

「検討を祈る」


何も言い返せなかった。


ニコッと爽やかに笑う社長に何の反撃も出来ない。

私は旭さんにはかなわないんだろうか…









「赤ワインを2つ。お待たせ致しました」


その日の夜。

真希から飲みに誘われた私は即OKして、会社の近くのワインBARで待ち合わせをした。


話は新婚の香苗の話題から始まり、お決まりの大学時代の昔話。

グラスワインも二杯目になったところで、自分の仕事の愚痴でも聞いてもらおうと思ったのだけれど…





「ねえ妙…聞いてくれる?」

「ん?どうしたの?」


浮かない顔をして言う真希の話を聞いてみると、どうやら彼氏とうまくいっていないらしい。

新社長の事を隅から隅まで話してスッキリしようと思ったのに、私が聞き役になってしまった…


それは残念だけど友達の恋がうまくいっていないのは嫌。

私は久しぶりの仕事帰りのお酒を噛み締めながら、真剣に真希の話を聞いていた。


よく考えれば、そもそも女子が集まってする話はほとんどが恋愛話と決まっている。

浮いた話のない私が友達にする話なんて、生憎昔話か仕事の話しか今はない。





「今日はありがとね!もう少し頑張ってみるよ」

「うん頑張ってね!また何かあったら連絡して」


ほろ酔い気分くらいの所でBARを後にした私達は、これから噂の彼と会う約束をしているらしい真希を駅まで送った後、まだ都内の繁華街をぶらぶらしていた。



彼氏と微妙とか言ってたけどこれからデートだもんね…

羨ましいな。


ここ何年もそんなことしてないなぁ…

ちゃんとしたデートなんて高校生の時以来してないかも。

本当にやばいな…私…





ブーブー…


当てもなくふらふらと歩いていたら、スーツのポケットに入れていたスマホが震え、すぐに出して画面を見ると旭さんからの着信だった。





「…げ」


1人で…しかも外だというのに思わず声が出てしまう。


こんな時間に何の用?

まだ9時前だけどろくな電話じゃない気がする…



嫌な予感しかしない私だったが無視するわけにもいかず、ふぅ…と深呼吸したあとで電話に出た。







「…はい、三井です」
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