イジワル社長と偽恋契約
給湯室前で汗を吹き出しながら必死に交渉していると、旭さんが後ろから私のスマホを奪う。





「落ち着けバカ…」


そう言って私の頭をコツンと叩くと、スマホを耳に当てて相手先の事務員と話し始めた。




「電話変わりました。私白鷺ハウス代表取締役社長の白鷺ですが…うちの秘書が失礼を言って申し訳ありません」


私に代わって旭さんが冷静に交渉しているのを横から見ていて、私は自分を責めまくっていた。


こんな失敗は初めてだ…

今日はどうしちゃったんだろう……






「…役員から「欠席でもいい」と言われたが電話での会議の参加を検討したらOKしてくれた。また会議が始まったら会社の方に連絡入れるって…」

「そうですか…」


しばらくして電話を切ると私にスマホを差出す旭さん。

彼のおかげで何とか会議には参加出来る事になったが、これから絶対に怒られるのを覚悟してやや下を向きながら待つ。






「熱でもあるのか?」


旭さんの手がスッとこっちに伸びてきて、私のおでこに触れると距離がぐっと近づき胸がドキッと鳴る。




「な、ないです!」

「…でもどこか体調悪いだろ?朝からいつもと違ってぼーっとしてたし」

「いえ…そんなこと」

「今朝の弁当の味噌汁はいつもより塩っぱかった」


遠まわしに私が作った料理をダメ出ししてくる旭さんだが、いつもよりも優しく振舞ってくれているのがわかる。


スケジュールのミスに怒りもしないなんて…

他人に予定を組まれるのが嫌いな彼にとってはかなり腹が立つはずなのに…





「本当に申し訳ありませんでした…私のせいで会議が……」


ミスしてしまった事をちゃんと謝ると、旭さんはため息をついた後どうでも良さそうな顔をする。
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