お猫様が救世主だった件につきまして
「1グラフは8ゲン単価ね。128なら、1024ゲン払わなきゃいけないんじゃないの?
なのに、彼の手には356ゲンしかないっておかしいでしょ」
あたしがすらすらと計算してみると、男は驚いたように目を見開く。やっぱり……あたしくらいの年頃でも、計算はできない人が多いのかも。こんな簡単な掛け算すら、男の子はできなかったんだし。
「ほ、ほら見ろ! やっぱりオレが正しかったじゃねえか! オッサン、オレをバカにして支払いを誤魔化そうとしたな」
男の子が男の手を掴むと、男は「はなせ!」と彼を突き飛ばす。辛うじてあたしが男の子を受けとめると、次に男はギロリとあたしを睨み付けてきた。
「余計なことをするんじゃねえよ!」
丸々と肥えた男性は顔を真っ赤にして怒り狂ってる。彼があたしに向かって手を伸ばした瞬間――バチン! と火花が散った。
あたしの前に赤いドラゴンのような姿が見えると、それが炎の壁を作り男を退けたらしかった。
「な……炎の護り……だと!?」
その場で尻餅をついた男は目を瞬いていたから、あたしはしゃがみこんで手を差し出す。
「はい、払うべきものはちゃ~んと払いましょうね。でないと……」
「わ……わかった」
男は渋々懐から財布を取り出すと、硬貨を幾つか投げるように渡してくる。
「800ゲン追加でお支払いね。まいど~」
少し多く受け取ったけど、あの男の子への慰謝料として貰っておけばいい。「姉ちゃんスゲー」と言われたあたしは、得意満面の笑みで男の子へ代金を渡そうとして……
「あ、姉ちゃんそこ……」
ズボッ。
腐った蓋を踏み抜き、側溝へ片足を突っ込んでた……。