お猫様が救世主だった件につきまして



「もう! たまには着飾らせてくださいよ。サクラ様は素材は悪くないんですから、絶対誰もが振り返るよう仕上げて見せますのに」


パティさんがぶうぶう言うから、あたしは片手を上げてウインクする。


「ごめんね、帰ったら好きなように飾り立てていいから」


あたしがそう言った途端、彼女はパアッと目を輝かせいそいそとドレスを選び出したけど。突然彼女は手を叩いた。


「そうそうご存知でしたか、サクラ様。このお部屋はかつて、王太子妃であられたアレク殿下のお母上の王妃様がお使いになってらしたんですって!」

「え……」


「アレク殿下がそれだけサクラ様をご寵愛なさってらっしゃる証ですわ!ですから、貴族の令嬢方があれだけやっかまれて侍女も嫉妬し冷たかったんですわね。でも、大丈夫。わたくしとアレク殿下がお守りしますから。やつらを見返すためにも頑張って綺麗になりましょうね!」


拳を握りしめ気炎を上げる彼女を残して、そっとドアを閉じる。


それであの時アレクがあたしをここに連れてきてくれたんだ。

あたしを守るために……


アレクの思いを知って胸が震え涙が出そうになるけど、あたしは頭を振ってそっと呟く。


「あたしは二度と“ここ”には帰らない。嘘をついてごめんね、パティさん。今まで本当にありがとう……」


想いと寂しさを振り切るように、早足で部屋を後にした。

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