妖しの姫と天才剣士



––––結局、その答えを左之さんは教えてくれなかった。


もやもやして、藤堂くんに気が散って仕方ない。


かと、思いきや近藤さんの乱入によってそれどころじゃなくなった。



「茅野くん!」



ボロボロ泣いている近藤さんは、私が目を覚ました時の総司より泣いていた。



「もう、俺のせいであんなことになってしまって……

二度と目が覚めないものかとさえ思ってしまった。

そうしたら、総司に殺されてしまいそうだがな」



苦笑いを浮かべながら近藤さんはそういうけど、総司がそんなこと思う訳……。



「……僕が、近藤さんを殺す?」



案の定目を丸くした総司は声をあげて笑い出した。



「そんなことある訳ないじゃないですかぁ〜。僕が、近藤さんを?」



ないないないと言いながらぼそっと呟いた。



「……まぁ、あと一日さゆの目が覚めなかったら誰か八つ当たりで殺してたかも?」



そう耳元で囁かれるとゾクっと背筋が震えた。


よかったぁ〜。今日目が覚めて。


誰かの命を八つ当たりで消し飛ばさずに済んだ。


そんなこんなで、この一月の他愛のない話をしていると、日が暮れ出していた。



「ああ、そうだ。皆」


近藤さんが去り際に、私たちに驚くようなことを言い残していった。



「––––––––だからな」


「「「「…………」」」」


「「「「はあああああっ!?」」」」



近藤さんが上機嫌で去って行った後、数拍おいて私たち四人はピッタリと重なった叫び声をあげた。


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