妖しの姫と天才剣士

華々しい宴を




––––その日の亥の刻。



「それじゃあ、池田屋の活躍と、茅野くんの復帰を祝い」


「「乾杯〜!」」



私たちは祇園のあるお店を訪れていた。


私が目覚めたことのお祝いだなんて大げさすぎると断ろうとしたのだが、総司に止められた。


なんでも、総司曰く。


『ここの人は宴の口実が欲しいだけだから。素直に祝われときなって』


らしいい。



まぁ、こういうどんちゃん騒ぎに慣れていないだけで、嫌だとは思わない。


それに急だったせいか幹部の人何人かと、山崎さん、島田さんくらいしかいないごく少数だ。


その誰も私がお世話になった人ばかりで気後れすることはなかった。



「しっかし、愛ってのは偉大なもんだなぁ〜」



誰かがしみじみと行った言葉に私は吹き出した。



「な、なんですか! それは」

「え? だって、総司を庇って池田屋の事件で倒れたんだろ?

だから、それは愛の為せる技––––って、おい総司!

刀、刀抜くんじゃねぇよ!」

「……そのうるさい下を切り離してやろうかと思いまして」



しれっと言い放った総司に永倉さんは膳をひっくり返しそうな勢いで立ち上がった。



「おい、総司!」

「それに」



っ!


いきなり総司に顎に触れられたかと思うと唇が触れ合う。


みるみる顔の温度が上がっていくのを感じながら、羞恥心でいっぱいだった。



解放されても、胸に抱き寄せられて見せつけるように抱きしめられる。



「僕は怒ってるんですよ? 軽率な行動をとったんだから」



「……後で、覚悟しときなよ」そう囁かれ、ふっと息を耳裏に吹きかけられる。



冷や汗ダラダラで、幹部の皆さんには熱い視線を送られるはで居心地の悪こと。


こういう時の総司には困らされて仕方ない。


まぁ、それが総司らしいちゃ総司らしいけど。


私は人知れずくすっと笑みを落とした。


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