強引な次期社長に独り占めされてます!
「どうした? 急に慌て始めたな」

無情にも去っていくタクシーを見送って、普段通り真面目な表情の主任を見上げた。

「主任、お腹空いていたんじゃないんですか?」

「……まぁ、仕事終わって何も食ってないしな。見た感じお前もだろ?」

「どこでご飯食べるつもりですか?」

「この店だけど?」

そう言って主任が指を差したのは、目の前の、洋館チックな白い二階建ての住宅だった。

お洒落だとは思うけど、どっからどう見ても普通の一戸建てにしか見えない。確かにお庭は綺麗にイルミネーションでキラキラしているんだけど。

「……ああ。そっか」

主任が何か察して、壁際を指差した。

そこには【ら・シエル】と言う平仮名と片仮名の金ぴかの表札……と言うより、看板?

凝視していたら、主任の暢気な声が降ってきた。

「まあ、知らない奴なら盛大に誤解しそうだよな。ところで、お前はそのつもりだったのか?」

はい? 思わず振り返って目を丸くする。

「そのつもりって、どんなつもりですか?」

「ん? 俺のうちに来るとか? でも、それならしょぼい食事になりそうだよな。俺は自炊しないし」

「相当、お腹空いているんですね」

主任は色気より食い気の人なのかな。
まっさきにご飯なんだ。

「色んな意味で飢えてるのは確かだ」

しみじみ呟いている主任を眺め、これ以上、聞いてはいけない気がしてきた。
< 119 / 270 >

この作品をシェア

pagetop