強引な次期社長に独り占めされてます!
「主任て家庭的ですね」

「年越しそば作ってる奴に言われたくねぇよ。独り暮らしを十年近くやってたら、ネギぐらい刻めるって」

話ながらも、器用に手は動いている。

「ネギを引き切りする男子は少なそうですが……」

「あー……別に普通。うちは共働きの家庭だったからな。まぁ、兄貴の影響もあるか」

ああ。お兄さんは小料理屋の店主さんですもんね。お兄さんのお料理はとても美味しかった。

「あの……替わります」

立ち上がりかけたら、静かな視線が返ってくる。

「怪我する前に大人しくしておけ」

「でも……お客様に作ってもらうのはダメだと」

思うんだけどな?

「その事も含め、だな。とりあえず座れ」

目を細めながら命令されて、ベッドの上に正座をした。

説教されそう? 実は主任って、話すことが好きなのかな。長い説明は忘れたことにしても、けっこう話すよね。

「俺はお客様のつもりはない」

「じゃあ、上司?」

「んなわけあるか、彼氏だ彼氏」

……そーんな気はしてましたけどね。
それを真面目な顔をして言っちゃうんだ?

「……でも主任をそういう意味では“好き”じゃないですし、主任だって私を“好き”ではないでしょう?」

「その決めつけの根拠は?」

主任は冷蔵庫を開けながら、そばの入ったパックを取り出して、それを煮えたぎったお鍋に投入する。

根拠は……ってさ。逆に“好き”だという根拠も見えないけど。

だってさ、会社に入って一年以上経ったけど、会話なんてほとんど成立していないんだよ?

私の教育係は芳賀さんだったし、たまに主任は長口上の説明が何回かくらいだったし。
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