強引な次期社長に独り占めされてます!
テキパキと用意している間にそば用のどんぶりを主任に手渡して、お節料理をこじんまりと盛っていく。

それを見ながら彼はどこかしみじみしていた。

「本格的に年越しだなぁ」

「作ったのはこれだけですからね」

「いやいや。お前の母さん、余程しっかりした人だな」

感心してる主任に首を振る。

「うちには母はいません」

「え。あ……そうか。そうなんだ。なんかごめん」

小さい頃に亡くなった母の印象はおぼろげだ。
今度は困った顔を見上げて、ちょっと笑った。

「早いけど食べちゃいましょう。そもそも、誰かいないと三日三晩、私はおそばと煮物で過ごすことになりかねませんから、逆にラッキーでした」

「ラッキーなのか?」

そんな事を言いながら、ささやかながらもこじんまりとした年越しが始まった。

「こんなことなら、何か買ってくれば良かったな」

「あ。すみません。飲むつもりは無かったのでお酒はないんですけど」

「まぁ、お前は少し限界が定まるまでは飲まない方がいい。さすがに俺も今は飲むつもりないなぁ。飲むなら兄貴の家に誘うぞ?」

飲みたいわけじゃないから、私は別に良いけれど……。

「お前はよーく考えた方がいいぞ? いくら“上司”認識してるとはいえ俺も男だし、ベッドは目の前にあるんだし、ふたりきりだし」

それはそう……。

そうだね! よく考えたら他に誰もいないワンルームにふたりきりだね!
しかも、少なくとも片方は堂々と自分を“彼氏”認識してるんだよね!

女の自覚がないね私! 普通に考えたらそうなんだけど、でもどうすればよかったの。

寒空にマンションまで来てくれた人を追い返せばよかったの?
それは人としてどうなんだろう。そもそも、主任が来たから……。

「主任は私が好きなんですか?」

「あー……けっこう直球だな。まぁ、考えなくてもわかりやすいと思うんだが」

いや。全然わからないよ。
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