強引な次期社長に独り占めされてます!
そう言われれば、視界がクリアだ。

ま、前髪は……?

ぱっと額に手を当てると包帯らしき感触があってビックリ、ついでに瘤のようなものに手が当たってビクッとした。

「痛……っ!」

「無茶をするな。倒れた拍子に額も強く打っている。散々だったな、松浦」

キシッと音がして、上原主任が視界から消える。
頭をなるべく動かさないように見てみると、椅子に座ったらしい。

「松浦さん。本当に、申し訳ありませんでした」

謝罪が聞こえてきたから視線を高井さんに向けると、彼は深々と頭を下げていたから慌てた。

「あ、いえ。あの……もういいです。そんなに大したことはないので、どうぞ、お仕事にお戻り下さい」

本当に困ってそう言うと、野間さんが微笑んだ。

「とりあえず入院とは言っても何か細々としたものは必要よね。実家に連絡しようかとも思ったんだけど、ご実家は少し遠いようなんだけど。どうする?」

ど、どうする? どうすればいいのかな?

確かに、実家は遠いから、念のための一日入院に来てもらうのもなんだし。
余計な心配かけるのも……。

「でしたら、ブライダルイベント課の本木芽依に連絡して頂けますか? 彼女なら、うちも知っていますし」

「ブライダルイベント課の本木さんね? 友達?」

野間さんの驚きに軽く頷きを返してから、痛みにまた顔をしかめた。

「了解。じゃ、目が覚めた事は帰り際にナースステーションで伝えておきますから、後はよろしくお願いします。上原主任」

「ああ。彼女の友達が来たら、僕も一度、社に戻るよ」

上原主任の返事を聞きながらぼんやりしていると、野間さんが高井さんの襟ぐりをつかんで病室を出ていった。

残された上原主任は無言。

……間が持たない気がしてきた。
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