恋は死なない。



いっそのこと、そんな和寿の気持ちを知らなければよかったと思う。

絶対に想いが届かないと思っていれば、このどうにもならない感情を自分の中だけで処理することも、もう少し簡単だったはずだ。



そして、夜になれば、この葛藤はもっと複雑に佳音に絡みついた。

気持ちが通じ合っていると知って、佳音の求める心はどうしても、以前よりもいっそう強くなってしまう。
和寿に会いたくて会いたくて、体が震えて自然と涙がこぼれて落ちる。


本当に自分のことが好きなら、なにもかも投げ出して、またここにやって来てほしい。自分だけの人になって、もう一度キスして……抱いてほしいと思う。


……でも、それだけは絶対に望んではいけないこと。


和寿は「もう戻れない」と言ったけれども、戻れないならば、どこに向かって行くというのだろう……。
幸世とのつながりを断ち切ってしまうと、和寿は会社にはいられなくなる。和寿が半生をかけて懸命に築いてきたものすべてが、瓦解してしまう。

自分たちが向かって行ける場所なんて、どこにもない。それでも敢えて、暗い闇の中へ突き進んで行くのなら、和寿に待っているものは破滅だけだ。

自分には、幸世のような力はない。……こんな存在している価値もないようなちっぽけな自分では、和寿を幸せにはしてあげられない。


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