恋は死なない。
佳音は、和寿の冷え切った腕をつかんだまま、工房のあるアパートへ歩き出した。和寿はそれに抗うことなく、黙ったまま佳音に付いて、アパートの階段を上った。
工房の中へ入ると、和寿は靴を脱がずに立ち止まる。
「こんなじゃ、汚してしまうよ……」
「……それじゃ、靴下を脱いで……」
躊躇する和寿を佳音が促すと、和寿は言われたとおりにぐっしょりと濡れてしまった靴下を脱いだ。佳音はその靴下を受け取ると、和寿の背中を押し、工房の奥の部屋へと連れて行った。
ベッドとチェストと、必要最小限の調度品と。そこは、和寿が初めて目にする佳音の生活の場だった。
激しい雨にさらされていた和寿からは、本人が言うとおり、いまだにポタポタと雫が滴っている。
佳音は、チェストの中からバスタオルを取り出してきて、和寿を拭き始めた。和寿は自分で自分をぬぐうことはなく、ただじっとして佳音のしてくれていることを受け入れている。
「……このままじゃ、風邪をひくから、濡れた服を脱がないと……」
佳音にそう言われても、和寿はただ木偶の坊のように何もできなかった。しょうがなく、佳音は和寿の着ているシャツの前のボタンをはずし始めた。すべてをはずすと、和寿の後ろへ回り、シャツを肩からはずし腕から抜き取る。