恋は死なない。



佳音は寂しい思いをするたびに、そう思って自分を納得させて生きてきた。
それほど……、無条件の愛情を注いでくれるべき両親に愛されなかったこと、渾身の力で恋い慕った古庄に同じ想いを返してもらえなかったことが、心に深い傷を残してしまっていた。


和寿は佳音を包み込むように、背中に回した腕に力を込め、その柔らかな髪に唇をつけた。


「僕は、君といると心が解放されて、いつでも自分が自分でいられることができた。君を心から欲しているから、自然と何度もここへ足が向いたんだ」


和寿の胸に唇をつけて、佳音は彼の真心を聞いた。

和寿は、会社でも実家の両親の前でも、期待されている自分を懸命に演じ続けてきた。彼がずっと背負ってきた重責と心の苦しさが伝わってきて……、できることなら癒してあげたい……佳音はそう思った。


「僕は、君を愛している」


囁かれた究極の言葉に、佳音の胸が震えて、涙が込み上げてくる。

涙で揺れる大きな瞳で和寿を見つめ、佳音は腕を伸ばして、彼の無精ひげの頬をなでた。


見つめあうと想いが募って、言葉は何も必要なくなる。二人はまた引き合うようにキスをし求め合って、何度も情熱にまかせて愛を交わした。



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