恋は死なない。
投げかけられた古庄の言葉に不意を突かれるように、佳音は思わず顔を上げた。
「同じような……って?」
「俺たちが出会ったとき、俺にはすでに婚約者がいたんだ。そしてその人は、真琴の元同僚の親友だったんだよ。もちろんそのときは、真琴がその人の親友なんて俺は知りもしなかったし、真琴も親友の婚約者が俺だったとは知らなかったけどね」
衝撃的な事実を知って、その事実を確かめるように、佳音は涙の溜まった目で古庄と真琴を交互に見やった。
そういえば、佳音が高校1年生だったころ、古庄が結婚するというような噂を聞いた覚えがある。そのとき、結局古庄は結婚しなかったみたいだが、その裏でそんな出来事があったなんて、当時生徒だった佳音には知る由もなかった。
「俺には婚約者がいるのに、俺は真琴のことを一目で好きになった。俺もかなり悩んで苦しかったけど、真琴は俺と親友との間に挟まれて、俺以上にそうとう苦しんだはずだ」
十年以上も経つ当時のことを思い出したのだろうか。真琴が唇を噛むと、涙がすっとその頬を伝った。
「俺は、どんな犠牲を伴っても真琴と生きていきたいと思って、結婚式を直前になってやめた。それで、真琴が納得してくれるまで待った。そして、真琴も苦しさを乗り越えてくれた。だから今、こうやって一緒にいられる。あの時、結婚するはずだった人を傷つけてしまったし、いろんな人に迷惑をかけてしまったけど、後悔はしていないよ」
********************
※ ここで回想している古庄と真琴のお話が「恋はしょうがない。〜職員室であなたと〜」です。
併せてお読みいただけたら幸いです。