恋は死なない。
昼下がりの落ち着いた静けさの中、和寿からじっと見つめられる視線を受けて、佳音も久しぶりにいささか緊張し始める。
目の前の針仕事よりも和寿の方に、どうしても意識が向いてしまう。
仕事の合間に顔を見せる和寿は、以前花屋で見た時と同じ整った身なりで、その寸分の隙もないほどの姿に、いつも佳音はドキドキと心臓が脈打つのが分かった。
でも、こんな和寿の隣に立つことのできる人は、幸世のような人…。彼女のように、華やかでしっかりとした人生を歩んで来たような人でないと、和寿には似つかわしくない。
佳音が今手にしているウェディングドレスが完成して、これを身に着けた幸世が和寿に寄り添う姿を想像すると、絵に描いたように本当に理想的な二人だと思った。
「……今日は、どうしてゆっくりできるんですか?」
あまりに熱心に見つめる和寿の視線に耐えかねて、佳音の方が口を開いた。
スーツのジャケットを椅子の背もたれに掛けて、くつろぐ雰囲気だった和寿が、話しかけられて佳音に目線を合わせる。
「この数か月かかりきりだった大きな仕事が、ようやく望ましいかたちで片付きました。それで、今日は久しぶりに午後から休みを取ることができたんです」
そう語る和寿の表情は安堵に満ちて、それだけ和寿が背負わされている重責が見て取れる。