恋は死なない。
佳音は自分のことを笑われているのにかかわらず、和寿のその笑顔を見て、恥ずかしく感じるどころか嬉しくなった。
「それじゃ、そのケーキも早く食べないと。あなたの分も、僕が食べてしまうかも」
楽しい気分に乗って、冗談交じりに和寿がそう言ってきたので、佳音も笑いを漏らす。
「古川さんは、クラスの男子みたいなことはしないでしょう?」
「いいえ、男子は誰だって、可愛い子にはちょっかいを出したくなるものです」
その言葉に、佳音の胸がドキンと鼓動を打って反応した。『可愛い子』というのは、自分のことだろうか…。
深い意味はないのだと思うけれど、こんなことを言われ慣れていない佳音は、ささいな冗談にさえも敏感になった。
佳音が何も言葉を返せずケーキを食べ始めると、途端に会話が続かなくなる。
先に食べ終わった和寿は、いつも針仕事をする佳音を見つめるように、じっと佳音がケーキを口に運ぶ様を見ていたが、やがて黙ったまま工房の方へと目を移した。
こんなふうになってしまうと、佳音の心は緊張して固まってしまう。人に対して、どうやって気遣ったらいいのか分からなくて、本当に情けなくなる。
こんな自分と気まずい思いでケーキを食べなければならないなんて、引き留められて和寿は迷惑だったのではないか…。佳音がそんなことを思い始めた時、和寿が口を開いた。