恋は死なない。
けれども、和寿はそれに答えない。
不審に思った佳音は、振り向けない幸世の代わりに、和寿へと視線を向けた。
すると佳音は、自分を見つめていた和寿の眼差しに射抜かれる。いつも作業をしているときに感じるものよりも、もっと深くて熱い視線に、思わず佳音の息が止まった。
目が合うと、和寿は佳音を見つめたまま、ほのかにその目を和ませる。佳音は体が熱くこわばってくるのを感じながら、とっさに顔を背けた。
「古川くん?どうしたの?」
幸世から確かめられて、和寿は我に返る。「なんだい?」と答えるように、鏡越しに幸世と視線を合わせた。
「なあに?あんまり綺麗だから、もしかして見とれてたの?」
幸世がそう言って和寿に突っ込みを入れながら、また声を立てて笑う。和寿はそれに何も答えられず、きまり悪そうに肩をすくめ、チラリと佳音へまた視線を向けた。
和寿は、幸世に見とれていたのではない。幸世の側で作業をする佳音を、無意識のうちにじっと見つめていた。
その視線の意味を考えると、佳音の胸が不穏にざわめいてくる。和寿に対して恋い慕う想いを抱いていることとあいまって、怖くなってくる。
幸世のいないところで、自分たちが何度も会っていることを、幸世に知られてしまうのではないかと……。