恋は死なない。



やましいことはなにもない。和寿は、ここへドレスの進捗を確認しに来ているだけだ。
それでも、和寿が足繁くここに来ている事実を知ってしまうと、幸世はやはり訝しく思うだろう。



「それでは、スカートの方に移ります。スカートの丈感やドレープ、後ろのトレーンのチェックをしてください」


佳音は再び、仕事に集中することに努めた。極力、和寿の方には視線を向けないように。

幸世は右を向いたり左を向いたり、鏡に映る自分の姿を余念なく確認し、ほんの些細な要望も逃さず佳音に伝えてくれた。

本縫いを始める前の最後の試着は入念に行われ、その後はいつものように佳音が紅茶を淹れ、三人はダイニングのテーブルに着いた。


「そういえば、テニス。最近一緒に行ってないわね?」


紅茶を飲みながら、不意に幸世が先ほどの話題を持ち出して、口を開いた。


「最近どころか、付き合い始めたころ一,二度行っただけだから、一緒に行ったのはもう半年以上も前のことだろう?」


和寿も息を抜きながら、半ば呆れたような受け答えをする。


「まあ、そうね。あなたはいつも忙しいんだもの。テニスなんかする暇ないわよね。私は週に一度はしてるのよ。腕が鈍らないように」


「君だっていつも忙しいじゃないか。それこそテニスやゴルフ、友達と買い物や女子会、朝から晩まで家にいることがないって、副社長も言ってたから」



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