砂糖菓子より甘い恋1
龍星はため息をつくと書物に顔を戻す。
御付の者達が青ざめているが、気にする様子はない。

「なんでしょう」

「鬼は桜の樹の下に眠っていて、花びらが散る時出てくるんでしょう?」

「そういう鬼もいますし、そうでない鬼もいます」

龍星は顔色を変えず断言した。

「ということは、都中の桜を焼き払えば、鬼はいなくなるということになるよね?」

「いいえ」

稚拙なやりとりに頭が痛くなってきた龍星はこめかみを抑えながら顔をあげた。

しかし、発言に反して帝は深刻な顔で龍星を見ている。

「だったらどうすれば良い?千が酷く怯えているんだ。
 桜を見ると眩暈がするって」

千……
思いがけず出てきた名前に、龍星は眉間にシワを寄せた。

「どちらで鬼に遭われたと?」

「自宅の部屋、もちろん左大臣の屋敷のね。だからここは安全だって言ってるのに……」

屋敷か!
龍星は書物を閉じて立ち上がる。

「分かりました。
 私にお任せ下さい。解決次第、ご報告に伺います」

「そう。よろしくね」

龍星の態度に安堵したのか、やたらと軽い調子で帝は言った。
もう、そんな帝の話など耳にも入らない様子で、龍星は雅之に目をやる。

「雅之、今から出れるか?」

「おお」

雅之は大きく頷いた。
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