砂糖菓子より甘い恋1
真剣に呪文を唱える龍星の横で、雅之は成すすべもなく立ち尽くしていた。

念のため、太刀に手をかけてはいる。
が、大抵の場合妖(あやかし)には、このような物理的なものは通用しない。

むしろ、どうして自分に妖怪が見えるのか不思議なくらいだ。

もっとも、それを口にすると
「俺なんかと友達だからだろ。もう近づかなきゃ見えなくなるさ」
などと、親友である龍星が冷たいことを言い出すので、それに関してはあまり追求しないことにしていた。

見えるものは見えるし、勝てないものは勝てない。

歯がゆいが、あるがままを受け入れるほかはない。

長い、長い、長い。永遠とも思われる呪文が途切れた、その一瞬。

「いやぁあっ!!」
という、悲鳴が聞こえ、
灰色だったはずの屋敷全体が、桜色へと姿を変えた。

……桜吹雪か?

瞬きをした直後、風景は元の鼠色へと戻っていた。

先ほどの光景は、幻かとも思われた。

「結界の中へ入る」

厳しいほどの眼差しで、そう、龍星が言わなければ。
< 25 / 53 >

この作品をシェア

pagetop