砂糖菓子より甘い恋1
あまりにも、さらりと言うので雅之が目を見張る。

「なんだ?
 不満か?」

「いや、不満とか言うわけではないが……

 ただ、意外だなと」

雅之の見てきた龍星は、妖(あやかし)との戦いには強いが、その周りの人間には全くといって興味がないような男だったから。

ともいえず、雅之は口をつぐむ。

クックと、龍星は喉の奥で笑った。

「本当、分かりやすい男だよ、お前は」

「いや、悪い意味ではなくて」

「ああ、そうだろうよ。

 何も聞くな。

 俺にも説明は出来ぬのだ」

柔らかい声で、龍星は言う。

ゆっくりと、夕日に染まるの京の町を歩く二人。



タヌキのところに彼女を置いておきたくなかったから、とか
あの屋敷がまだ危険かもしれないから、とか
目を覚ましたときの彼女の記憶のなくし具合が気になるから、とか

理由をつけようと思えば、いくらでもつけれる気がした。

でも、そういう言葉で片付くことが、本当の理由だとは思えなかった。

もっと、別の。
今まで目にしたこともないような、胸の奥から勝手に湧き上がってくる切なさを帯びた甘ったるい感情。

名前すらつけられないような、その感情から出た、良く分からない行動でしかない。

……とも言えず、龍星は足を進めた。

雅之も、何も聞かない。



きっと、こういうことを言葉にするのを、野暮というのだろうな……

などと、考えながら初めて恋に落ちた親友の半歩後ろを歩いていた。

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