〔B L〕朽ちた無花果

「…簡単に、俺を信じるんですね。」

「?
だって貴方は患者さんですから。

患者さんが言うことは、僕信じます。
僕が信じないと、患者さんも僕を信じてくれないでしょう?」

「…フッ、自分が信じても相手から信用されるなんて分かんないだろ…」

俺は、ボソッと呟いた。

「確かにそうですね。
でも僕は患者さんを信じてますから!」

え…ちょっとまて、今の呟きが聞こえてたのか?

本当に、かすれ声で言ったのに…。

「今の、俺の声…
聞こえてたんですか?」

「ああ…。
僕、耳はいいんですよ。」

精神科医は、困ったように笑った。
なぜそんな笑い方をしたのか俺には分からない。

だから、もっと知りたいと思った。


篠崎晴のことを、もっと。


「…それじゃあ、また来ますね。
晴さん。」

「はい、お待ちしております。
それまでお元気で。」

ガラッ

扉を閉める。

これは、予想以上の収穫だ。
俺、いいオモチャを見つけたかも。
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