〔B L〕朽ちた無花果
なんて温かい人なんだろう。
こんな温もり、僕は知らない。
知らないよ…
「恋がどんなものなのか、知識はあります。
ただ、体験したことがないので、知識と体験が結び付かないんです。
だから、恋がどんなものなのか僕は知りません。
でも…升也さんといると、とても心地いいです。」
自分の過去も、嫌なことも、すべて忘れさせてくれる。
升也さんは、すごい。
「今まで1度もしたことないんだ、恋。
俺と同じだな。」
「えっ…!
升也さんも、恋したことないんですか?」
「華やかな世界にいるのに、不思議だってか。
そりゃ、美人系も可愛い系も選り取り見取りだよ?
でも、この世界は騙し合いの世界だ。
だから、“マヤ”に近づいてくるやつらの顔を信用するのは馬鹿のすることだよ。」
芸能界は、騙し合いの世界?
…ああ、確かに演技とか、そういう面では騙し合いか。
じゃあ…
それじゃあ、もしかして升也さんも?
「芸能人は、恐ろしいですね。
素知らぬ顔で嘘を吐く。
きっとそれに、僕は気づかないでしょう。」