この度、友情結婚いたしました。
それになに?
あわよくばこのままずっと――……なんてバカなことも、感じちゃっていなかった!?

つい先ほどの情事だ。
ちょっと思い返せば鮮明に感触もぬくもりも思い出せてしまう。


ぎゃー!なにやっちゃっているのよ私―!!


人生最大の失態じゃない!
好きかどうか分からない、しかも長年友人関係にあった幼なじみの春樹と、あんなキスしちゃうなんて……!

後悔に悶えている最中も、春樹の抗議は続いていた。


「卑怯だぞ!」とか「飢え死にさせる気か!」とか「ヤリ逃げ」とか……!


「とにかく無理だから!」


それでも無理と訴え続けると、ドア越しにいても分かるくらい盛大な溜息が聞こえてきた。


「お前なぁ……この歳になれば分かるだろ?男の事情が。それでも逃げるつもりか?」

今度は諭すように言ってきたけど、私の心が動くわけがない。

「何言われても無理です、ごめんなさい」

すぐに返事をすれば、また春樹の怒鳴り声が聞こえてきた。
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