この度、友情結婚いたしました。
そう言われてしまったら、ここは素直に従うべきだよね。

「ありがとう」と伝え、言われるがまま先に店を出た。ランチの時間ということもあって、レジは混雑していて、まだお会計まで時間がかかりそうだった。


それにしても……私ってばなにやっているんだろうか。

店先でがっくり項垂れてしまう。


絶対さっきの、傷つけちゃったよね?嫌な思いさせちゃったよね?

だって琢磨、ここにきて食べ終わるまでずっと普通だったのに、あの話を切り出したときからどことなく、照れ臭そうにしていたし。……逆の立場だったら、すっごい緊張しちゃっていたと思う。

せっかく誘ってくれたのに、何も言わず勘違いさせて、おまけに傷つけて……。


これじゃ結局、昔と同じじゃない。また琢磨のことを傷つけているなんて。
なにより、誘われて嫌じゃなかったのに。本当は嬉しかったのに。


ふとあさみの言葉が頭をよぎる。よーく考えなさいと言ったあさみの言葉が。

そう、だよね。今は考える時なんだよね。琢磨は真剣に私に気持ちをぶつけてくれている。なら私もちゃんと考えないと。自分の気持ちと琢磨に対する気持ちも。


「悪い、まどか。お待たせ」

「あっ、ううん。こっちこそごめんね。いいお店紹介してもらったのに、奢ってもらっちゃって」

「全然、気にするなって」


ほら、さっきのことなんて微塵も感じさせないほど琢磨はいつも通りに接してくれる。

優しい人なんだ、琢磨は。昔から今もずっと――……。

あさみの言うように、私がこの先一緒にいて幸せになれるのは春樹じゃなくて、琢磨なのかもしれない。


浮気の心配もないし、毎日下らないことで言い争いしなくて済む。老後だってきっと幸せに暮らせるはず。
考えてみてもいいのかな?気持ちに正直になって、春樹とじゃない琢磨との未来を。
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