この度、友情結婚いたしました。
気持ちを入れ替え、今度は私が琢磨の手を引き歩き出すと、琢磨はやっぱり嬉しそうに目を細めるばかりだった。


つい最近春樹と来たばかりなのに、一緒に来たのが琢磨ってだけで新鮮に感じてしまうから不思議だ。
館内を回るうえで、気づくところとか見るところが違うと、また違った視点から水族館を楽しむことができる。


春樹と来た時は、あいつの変なこだわりが災いして館内隅々まで見せられたけど、琢磨は違う。

私が見たいところを尊重してくれて、見るスピードも全て私に合わせてくれる。
だけど――……。


「俺、水族館に来たら一番楽しみなのはイルカのショーなんだけど、まどかは?」

「――え?」

「まどかはどの動物が一番好き?」


展示物を見ながらふと投げ掛けられた質問に、固まってしまう。
別に普通に答えればいいじゃない。私も琢磨と同じ。イルカが好きだよって。


なのに言葉が出ないばかりか、春樹のことばかり頭に浮かんでしまう。


琢磨は私のことよく理解してくれている。考えていることも好きな料理も、映画の趣味も。
そんな琢磨なら私がイルカを好きってことも、知ってくれていると勝手に思い込んでいた。


あぁ、そっか。だからこんなに驚いちゃっているんだ。


よく考えれば当たり前のことなのにね。琢磨と水族館に来たのは、付き合っていた時のたった一度だけ。
それなのに私がイルカを好きだってことを知っている方が、おかしな話なんだ。


春樹と琢磨は違う。それぞれと過ごしてきた時間も、お互いのこと分かり合ってきた時間も――。


「なに?そんなに悩むほど好きな動物がいっぱいいるのか?」
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