この度、友情結婚いたしました。
そんなの私も思っているに決まっているじゃないですか。


だけど今さら言える?「私もっ!」って語尾にハートマークを付けて!


お互いのことを知り尽くしているからこそ、素直になれない時もある。
特にこういった時。

本音は後ろからハグされて嬉しいくせに、むしろバッと振り返って真正面から抱きしめてほしいとか思っているのに。


それを今さらこの私が、この春樹に言える?
散々罵り合ってきた仲だというのに!


春樹は平気で言ってくるけど……私はまだ慣れていない。
甘い雰囲気になっちゃった時の対処法を。


「ほら、まどか。本より俺を見てよ」


それでも春樹が強引にきてくれれば、変な意地やプライドばかり優先させちゃっている私も、少しだけ素直になれることができるの。


言われるがまま本を閉じ、少しだけ顔を後ろに向ければ春樹の大きな手が頬に触れる。


撫でる手がくすぐったくて目を閉じてしまうと、そっと触れるだけのキスが落とされた。


「……もう一回な」

擦れた声で囁かれた瞬間、心臓が飛び跳ねた。
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