ENDLESS
また、一時間かけて走って、駐車場に車を停めた時、
時計は、午後十一時を回っていた。
さすがに、高校生が出歩く時間ではない。
もしかすると、嫌だ嫌だと言いながらも、実家に帰ったのかもしれない。
そんなことを考えながら、自分の部屋の前まで来ると、
「清ちゃん……」
しょぼくれた君が、うずくまっていた。
その瞬間、
「おまえなぁ!! どこ行ってたんだよ!! 俺、今まで探し回ってたんだぞ!!」
俺は、声を荒げる。
「だって……」
それなのに、そんな俺に構わず、君は、泣きながら抱きついてくるから、それ以上、きついことも言えず、
俺のほうが泣きたいんだけど……
そんな言葉を、飲み込んだ。
「……で、どこに行ってたんだよ?」
俺は、今日、やっと帰宅を果たし、
ホットミルクをいれたカップをローテーブルの上に置く。
俺の分と、もう一つ、目の前でぐずぐずと泣いている、君の分。
「友達の……とこ、行ってた。でも……遅いから……帰れって……」
「あーそう。で? どうして友達のとこ行ったの?」
「片付け……したく……ない」
「だから、俺が片付けてやるって言ってんじゃねーか」
「だって……部屋……片付いたら……もう……清ちゃんと一緒にいられない!!」
「……ちょっと待て、どういうことだよ、それ」
よくよく聞くと、
君が俺の部屋にいるのは、君の部屋が汚いからであって、
君の部屋が片付けば、俺の部屋にいる理由がなくなる。
故に、もう一緒にいられない、と。
そう考えた君は、明日から逃げるために、友達のところへ行き、泊めてほしいと頼んだが、断られ、泣く泣く戻ってきた。
というわけだ。
ああ、今朝のあれは、
機嫌が悪かったのではなく、
不安だったのか。
「べつに、一緒にいたっていいけど……」
「……え?」
つまり、今日の君の行動は、全て、俺と一緒にいたいがためのものだったのだ。
そう理解した途端、
怒りや呆れの感情は吹き飛び、
どうしようもない嬉しさが込み上げ、
「だから、部屋が汚くても綺麗でも、一緒にいたいなら、一緒にいればいいって言ってんの」
どこかで鳴る、教師として、大人として、ここで突き放すべきだ、という警鐘さえも吹き飛び、
ただ、君が俺を求めてくれることが、嬉しくて、嬉しくて、嬉しくて、
俺は……
「……これからも、清ちゃんと一緒にいていいの?」
君を、突き放すことなど、できやしない……
「いいよ」
○●○●○