ENDLESS





「明日からの連休、おまえの部屋、片付けるからな」





君が俺の部屋にやってきて、数日が過ぎた、ある金曜日の朝、





俺は、君に、告げる。





「……わかった」





君は、少し、浮かない声で、返す。





今日は機嫌でも悪いのだろうか……





「じゃあ、俺、先に学校行くから、戸締まり任せたぞ。おまえも、ちゃんと学校来いよ、遅刻すんなよ」



「うるさいなぁ!! わかってるよ!!」







その、十二時間後。







俺は、勤務を終え、学校を出て、帰路を歩きながら、



とりあえずゴミを捨てるところから始めようと、



そう、明日から、あの君の部屋をどう片付けるかについて、考えている。



自分でやれと言っても、きっと、君は、何かと理由をつけてぐずるだろうから、



結局、俺が動かなくてはいけないのだろう。





そうしているうちに、自分の部屋に着き、玄関のドアを開けたところで、



違和感を覚える。





明かりが、ついていない。

テレビの音が、聴こえない。

お菓子を食べながら、ごろごろしているはずの君が、いないのだ。







「どこ行ったんだよぉぉぉ!!」







俺は、そう叫んで、真っ暗な部屋を飛び出す。





君が、俺の部屋にやってきてから、



君の帰りが、俺より遅くなることはなかった。



いつも、テレビの前でお菓子を食べながら、ごろごろ、ごろごろ、



今日の御飯、何?



などと、呑気に聞いてくる、



それが、当たり前になっていただけに、



心配が募る。





俺は、また、学校まで戻って、校内を一周する。



いない。





「まさか……実家? あんなに嫌がってたのに? ないない」





それなら、どこへ行ったのか。





「あの汚部屋か?」





明日から片付けると言ったから、一足先に、戻ったのかもしれない。





「また、一時間かけて走るのかよ……」





俺は、駐車場まで行き、車を出す。





そうして、また、一時間かけて走ったのに、



君の汚い部屋も暗いままで、



玄関の扉をドンドン叩いても、



返事がない。





「もも!! どこ行ったんだよ、ももー!!」





とりあえず、近所の公園なども回ってみる。



君の名を呼びながら、君を探す、途中、





ワンちゃんかネコちゃん逃げちゃったの?





などと、見知らぬ人に声をかけられ、恥ずかしい思いもしたというのに、



見つからない。





「どこに行ったんだよぉ……」





土地勘もない場所で、途方に暮れていてもしかたがない。



それに、君が、確実に、この町にいるとは限らないのだ。





一旦、戻ろう。





そう決めて、とぼとぼと、車に乗り込む。





「また、一時間か……」





○●○●○
< 9 / 18 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop