ENDLESS



午前中か午後か、



授業中か放課後か、



それによって姿を変える教室とは違う。





保健室は、いつでも、保健室だ。





「膝、赤くなってる。痛い?」



「痛いって言ってるんだけど、ずっと」



「聞こえてなかった、悪いな」



「何、それ……」





君だって、君だ。





揺れる、その髪も、

薄い、その肌も、

さらに、その下に流れている何かも、





全て、藤崎先生のものなのだとしても、





君は、君だ。





「あんまり派手に落ちたから、気が動転してんだよ」



「頭でも打ったんじゃないかって?」



「そうそう。俺、先生だからさ、校内でケガとか焦るわけ」



「頭も打ったよ」



「そんだけはっきり話せりゃ、大丈夫だろ」



「じゃあ、話さない!!」



「面倒臭ぇ奴だな……」





藤崎先生が好きで好きでしかたがなかった、あの頃、



触れたくて触れたくてしかたがなかった藤崎先生に、



今、君を通して、触れているのだとしても、





何の実感も感慨も得られないのも、





おもしろいくらい、何も、感じないのも、





君が、君であるからだ。





「やっぱ、痛いな……」



「ちゃんと歩ける?」



「……じゃあ、歩けない」



「またそういうことを言う……だったら、送ってってやろうか?」





だから、俺は、さらに、





君が、藤崎先生ではないと、落胆して、





「私ん家、遠いよ」



「どこらへん?」



「西楓市」



「嘘だろ?」



「何で、ここで、嘘つかなきゃいけないの」



「……まぁ、そうだよな」





そう、俺は、さらに、





君が、藤崎先生ではないと、理解して、





「車でも一時間はかかる」



「それなら、尚更、送ってくよ」





まるで、軽々しく、





「いいの?」



「いいよ」





頷いた。





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