ENDLESS
それは、確かに、長い道程だった。
学校を出る前は夕焼けの空も、みるみるうちに、夜空へと変わっていく。
君を車に乗せて送る、途中、
どうして、こんなに遠くに住んでいるのかと問うと、家賃が安いからだという答えが返ってくる。
家族との折り合いが悪く、高校入学を機に家を出て、今は、一人で暮らしているという答えも。
それは、藤崎先生とうまくいっていないということだろうか……
そして、俺は、これまで、確信しながらも、確定してはいなかったことを、問うてみる。
「実家はどこ?」
「学校の近く……」
ああ、やっぱり。
藤崎先生も、学校の近くに住んでいる。
そういえば、俺は、それを知っていて、今の学校に勤めることを決めたのだった。
藤崎先生の近くにいれば、
いつか、藤崎先生とばったり逢えるような気がして、
逢えなくとも、どこかで、俺を見つけて思い出してくれるような気がして、
そんな、些細で浮わついた動機で。
実際には、藤崎先生に逢うこともなく、
だから、見つけて思い出してくれるということなど確かめられるわけもなく、
長い長い時が過ぎるうちに、その決心も、その動機も、そして藤崎先生の存在すらも、忘れてしまったのだが。
どうして、今さら……
だが、これまでの自分の行動を振り返れば、
ずっと藤崎先生の近くにいた俺は、藤崎先生の子とも近くにいたということになるわけだから、
こうして、藤崎先生の子と出逢ったことは、何ら、おかしなことではなく、
むしろ、必然。
遅れて、形を変えて、やってきた、必然なのだと思う。
そう、俺は、
藤崎先生には逢えなかったが、
藤崎先生の子には逢えたわけだ。
君は、確かに、あの時生まれた、藤崎先生の子なのだろう。
「こんな遠いとこから通うの大変だろ? 実家からのほうが……」
だが、君は、
「家には帰らない!!」
藤崎先生を、拒絶する。
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