ENDLESS
君の住むところに着いた頃には、夜の暗さは満ちていた。
郊外の町らしく、あるのは住宅とコンビニくらいで、夜の暗さに加え、静けさまで満ちていた。
だから、そんな夜道を一人で歩かせることが心配になったのか、
あるいは、教師として、風紀の観点から、高校生の一人暮らしの様子が気になったのか、
それとも、君が、足が痛くて歩けないとぐずるからか……
俺は、車を停めて、君の部屋まで付き添うことにした。
そして、ありふれた外観のアパートの、二階の一室のドアを開けたところで、
「何これ……ゴミ屋敷じゃねーか!!」
思わず、叫んでいた。
「……片付け、苦手なんだよね」
「いや、苦手とかいうレベルじゃねーだろ、おまえ、これ、片付ける気ねーだろ!!」
1Kの間取りの部屋は、玄関付近までゴミ袋があふれ、キッチンの流し周りには弁当か惣菜か何かのトレーやペットボトルが積まれている。
まさか……と思い、その先の扉を開けてみると、案の定、六畳くらいの広さだと思われる居室には、服が散乱し、また、学生らしく参考書やノートも散らばっている。
「足の踏み場もねーじゃん、どこで寝るんだよ」
「ベッドに決まってるでしょ!!」
「そうか……この山積みの服の下にベッドが隠れてるわけだな」
俺は、唖然としながら、君の部屋を見渡す。
「様子、見にきて正解だったな、こんな荒れた生活をしているとは……」
呆れまじりに、そう言っても、
「さっきからうるさいんだよ!! しかたないでしょ、実家ん時はいつも親が片付けてたし、そういうの、慣れてないだけだよ!!」
君は、負けじと強がって、
「だからさぁ、高校生で一人暮らしは早すぎるってことだろ。諦めて、実家に帰ったほうが……」
それでも、まだまだ強がって、
「家には帰らないって言ったでしょ!! 何だよ、この部屋が気に入らないなら、清ちゃんが何とかしてよ!!」
そんなことを言うから、
「はぁ!? どうして俺がおまえの部屋を片付けなきゃなんねーんだよ、家には帰りたくねーんだろ、だったら自分で責任とれよ!!」
「何だよ、それ!! 逃げるのかよ!!」
話は、どんどん変な方向へ進み、
「私だって……こんなつもりじゃ……なかったんだよ……これでいいなんて思ってるわけ……ないでしょお……」
泣きつかれてしまえば、突き放せなくなり、
「あーもう、わかったわかった、部屋は今度片付けてやるから」
「……今日は帰っちゃうの?」
「今日はもう遅ぇし、俺、帰って明日の授業の準備するから」
「そうだよね……」
やけにおとなしく引き下がられると、助けてやりたい気になって、
「……じゃあ、一緒に、うち来る?」
ついつい、そんなことを口走って、
「いいの?」
「よくはねーけど……この部屋じゃ……ああ、洗濯はうちでしてやるから、そのベッド? その上に積んであるとこから適当に何か持ってこいよ」
よくはないと言いながら、
「ありがとう」
今日、出逢ってから、はじめて、君が素直な笑顔を見せた時、
俺まで、素直に、嬉しくなって、
「まぁ、しかたねーよなぁ……」
君と一緒に、君の部屋を出た。
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