フキゲン課長の溺愛事情
 そう言いながらも、璃子は話題を逸らされたことに気づいていた。とはいえ、話を変えたということは、触れられたくないということなのだろう。璃子もあえて追求せずに別の話をする。

「今日はお昼に移動オムライス屋さんでオムライスを買ったんですよ。でも、あの狭いオフィスで食べたくなくて、沙織と一緒に公園に行きました。天気がよくて気持ちよかったですよ。課長はどこへ食べに行きました?」
「社食」
「青葉くんも行ってましたよ。会いました?」

 璃子の問いかけに、達樹が小首を傾げる。

「あいつ、静かに食べていた男子社員の中で、ひとりだけべらべらしゃべってたよ。うるさいったらなかった。どうしてああも空気を読まないんだろうな」
「課長もそう思いました? 彼の場合、〝読まない〟じゃなくて〝読めない〟んだと思います。青葉くんって独特の雰囲気がありますよね~。でも、広報室できつい女の先輩二人に囲まれてうまくやっていけるのは、彼みたいにどこか抜けたキャラだと思いますよ」

 あはは、と笑う璃子に、達樹が言う。

「俺はおまえたちのことをきついと思ったことはないぞ」
「え」
「三人でよくがんばっていると思う」
「あ、一応、高井田課長も頭数に入ってるんですよ」
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