フキゲン課長の溺愛事情
 テーブルには、今日はベーコンエッグとレタス、こんがり焼けたトーストののった皿とヨーグルトのカップが並んでいた。

(起きたら朝食が用意されてるって……すごく幸せかも……)

 ひとりでほっこりしてしまったが、上司に作らせてしまったのだ。一応気を遣って謝罪する。

「あのう、今日も……作っていただいてすみません」
「気にするな、昨日の肉じゃがの礼だ」
「それじゃ、朝食のお礼に今日は夕食にショウガ焼きを作りましょうか?」
「水上だって仕事をしているのに、気を遣わなくていいぞ」
「別に気なんか遣ってませんってば。それに、ずっとふたり分を作ってたから、ひとり分の分量がわからないし」

 璃子が言って小さく肩をすくめたのを見て、達樹の表情が曇った。

「水上……」
「あ、大丈夫ですってば。もう泣いたりしません。それじゃ、いただきます!」

 璃子はいつものごとく手を合わせた。つられたのか達樹も手を合わせる。そうして同居二日目となる水曜日の朝も、璃子は上司の手料理を食べたのだった。
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