フキゲン課長の溺愛事情
「仕事の話。エコタウンのパンフの和訳、できれば急いでほしいんだけど」
「啓一さんの部屋から出て行かないあなたのお願いを、どうして私が聞かなくちゃいけないんですか」
私情がたっぷりこもったその言葉を聞いて、璃子は引っ越したことを伝えていなかったのを思い出した。
「あ、言い忘れてたけど、私、もう引っ越した」
「えっ」
「仕事に私情を持ち込むのは嫌なんだけど、これであなたの気が済んだのなら、河原崎さんに頼まれた仕事を進めてくれないかな」
璃子は目を細めてじっと見た。友紀奈はふてくされたように頬を膨らませて黙っている。
(まだなにが気に入らないんだろう)
璃子は努めて穏やかな声を出す。
「あのパンフは、うちの事業を社外にPRするために必要な資料なの。だから、よろしくお願いします」
璃子は頭を下げた。視界に友紀奈のブランドもののパンプスだけが見える。それが方向を変えたかと思うと、友紀奈はなにも言わず、璃子の横を素通りして行った。
「啓一さんの部屋から出て行かないあなたのお願いを、どうして私が聞かなくちゃいけないんですか」
私情がたっぷりこもったその言葉を聞いて、璃子は引っ越したことを伝えていなかったのを思い出した。
「あ、言い忘れてたけど、私、もう引っ越した」
「えっ」
「仕事に私情を持ち込むのは嫌なんだけど、これであなたの気が済んだのなら、河原崎さんに頼まれた仕事を進めてくれないかな」
璃子は目を細めてじっと見た。友紀奈はふてくされたように頬を膨らませて黙っている。
(まだなにが気に入らないんだろう)
璃子は努めて穏やかな声を出す。
「あのパンフは、うちの事業を社外にPRするために必要な資料なの。だから、よろしくお願いします」
璃子は頭を下げた。視界に友紀奈のブランドもののパンプスだけが見える。それが方向を変えたかと思うと、友紀奈はなにも言わず、璃子の横を素通りして行った。