フキゲン課長の溺愛事情
璃子が顔を上げて角から覗いたときには、友紀奈の背中は総務課のオフィスに消えていた。
璃子は小走りで屋外の非常階段に向かった。重いドアを開けて階段を駆け上がり、四階と五階の踊り場で足を止め、鉄製の黒い柵を掴んで身を乗り出す。
「もーっ! なんなのよーっ!」
璃子があげた大声は、ビル風に吹き飛ばされて消えた。仕事に私情を持ち込むのは嫌だ、と言っておきながら、友紀奈を目の前にすると、どうしても胸の中にドロドロとした黒い感情が渦巻いてしまう。どうして啓一は私よりあの子を、と納得できない思いが募ってしまう。
柵に背中を預け、深呼吸を繰り返す。
(もう泣かない。気にしない。忘れる)
それを呪文のように何度も唱えて、どうにか気持ちを落ち着かせると、広報室に戻るべく階段を上り始めた。
その日の昼休み、璃子は沙織と社員食堂でランチを食べた後、ひとりでOSK繊維開発の敷地をのろのろと歩いていた。向かうは繊維研究部の入る研究所だ。啓一にマンションの鍵を返しに行くのだ。
璃子は小走りで屋外の非常階段に向かった。重いドアを開けて階段を駆け上がり、四階と五階の踊り場で足を止め、鉄製の黒い柵を掴んで身を乗り出す。
「もーっ! なんなのよーっ!」
璃子があげた大声は、ビル風に吹き飛ばされて消えた。仕事に私情を持ち込むのは嫌だ、と言っておきながら、友紀奈を目の前にすると、どうしても胸の中にドロドロとした黒い感情が渦巻いてしまう。どうして啓一は私よりあの子を、と納得できない思いが募ってしまう。
柵に背中を預け、深呼吸を繰り返す。
(もう泣かない。気にしない。忘れる)
それを呪文のように何度も唱えて、どうにか気持ちを落ち着かせると、広報室に戻るべく階段を上り始めた。
その日の昼休み、璃子は沙織と社員食堂でランチを食べた後、ひとりでOSK繊維開発の敷地をのろのろと歩いていた。向かうは繊維研究部の入る研究所だ。啓一にマンションの鍵を返しに行くのだ。